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判例 職場の対人関係悪化でメンタル不調 (2017年2月号より抜粋) | |
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健康への注意義務おこたる 会社は異動を検討するべき 職場に相性の悪い同僚がいると、仕事上のストレスが倍加します。本事件では、「2人体制」で働く従業員の一方が他部署への異動等を求めましたが、上司は指揮監督権を行使せず、放置していました。裁判所は、「労働者の心身の健康を損なわないよう注意する義務」に違反したとして、会社に慰謝料の支払を命じました。 A社事件 東京地方裁判所(平27・3・27判決) 職場で過ごす時間は、1日の少なからぬ部分を占めます。人間関係が悪化すると、出社から退社までの時間が耐え難いものに変じます。私的なパートナーと異なり、職場の同僚は自ら取捨選択ができません。職場環境の悪化により、メンタルヘルス不調を引き起こす人もいます。 本事件は、問題がこじれにこじれ、裁判にまで発展したものです。 訴えを起こしたAさんは、入社後、Bさんと「二人体制」で業務を行うことになりました。 しかし、このBさんは、コンビで仕事をするには向かないタイプのようでした。Aさんは、上司のC部長に実情を話し、改善を求めました。 しかし、C部長が採った対応は、「Aをチームリーダーに指名し、Bに対する業務の指示・指導を行わせる」というものでした。小手先の解決策というほかありません。もちろん、事態は好転するどころか、悪化するばかりです。 Aさんは、C部長に次のように訴えました。
こうした状況下で、BさんがAさんからパワハラを受けたと社内窓口に訴え出るという事件が起きました。事実無根と判明したものの、Aさんのストレスは頂点に達します。 Aさんは、訴状で「会社が安全配慮義務または職場環境を整える義務を怠った」と主張しました。安全配慮義務は、現在、労働契約法第5条に定められていますが、それ以前から判例法理が確立していました(うつ病に関するものとして電通事件、最判平12・3・24等)。 判決文では、「C部長がAをチームリーダーとしたのは、問題のあったBへの対応を全面的にAに負わせるものだった」「2人体制の相手方からパワハラで訴えられるという出来事は、対立が非常に大きく深刻であると解される点で、Aに相当強い心理的負荷を与えた」と述べました。 それにも関わらず、C部長・会社が配置転換等の具体的な対策を講じなかったことから、健康配慮義務違反があったと認定し、慰謝料の支払いを命じました。 上司の中には、「人間関係のゴタゴタにはかかわり合いたくない」という人もいるでしょう。しかし、それを放置していれば、会社も責任を問われる点は肝に銘じておく必要があります。
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