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判例 本人記載の日報を証拠不採用 (2017年4月号より抜粋) | |
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サービス残業で争う 労働時間とは認めず 不払い残業の裁判で、しばしば労働者側が作成した記録が証拠として採用されます。会社側の反証はなかなか難しいのですが、本事件は「日報」の信用性が否定されたものです。「始業前・後等に業務に従事」という本入記載だけでは「労働時間」と評価できないとして、割増賃金の支払請求の大部分が否定されました。 Hバス事件 大阪地方裁判所(平27・8・10判決) 残業等の割増賃金は、会社が把握した労働時間をベースに計算されます。ブラック(グレー)な企業では、少なからぬ時間が「サービス残業」として記録に残されません。 不満な労働者は、裁判に訴えます。この場合、「何時間分の不払いがあった」という事実は、基本的に労働者側(訴える側)が立証する必要があります。 労働時間の証拠としては、タイムカード等のほかに、業務日報、パソコンの稼働記録等も使用されます。 不払い残業ではなく、過労死の事案ですが、遺族の日記等が長時間労働を立証する証拠として、取り上げられた例もあります。 会社側に有力な反証がなければ、なかなか裁判に勝てないのが実情です。しかし、本事件は、労働者側の証拠の信用性が否定されたものです。 裁判を起こしたのは、バス会社営業所勤務の助役です。一昼夜交代勤務(24時間)に従事していましたが、「仮眠時間も労働時間に含まれる」「始業前・後や休憩時間にも業務に従事していた」などと主張し、未払い賃金の支払等を求めました。 まず、仮眠時間ですが、過去の最高裁判例では労働時間に当たると述べたものがあります(大星ビル管理事件、平14・2・28)。しかし、本事件では、「(営業が終了し)構内の点検の後、翌日の始発バスまでの時間、労務の提供が義務付けられていなかった」ため、労働時間と評価されませんでした。 始業前・後の時間について、Aさんは自らが作成した日報に基づいて割増賃金を請求しました。しかし、「担当者がその内容を認識したり、労務管理に利用したりしていた事実はない」「そのほか、記載の正確性を客観的に裏付ける証拠もない」として、信用性を疑問視しました。 休憩時間(3時間)に関しては、そのうち1〜2時間は労働時間に当たると認定しました。 上記の事実認定に基づき、「始業前・後の時間、不活動仮眠時間については、労働時間と認められないか、労働時間(会社の出務表に記録のある残務処理等に要した時間)として既に賃金が支払い済みである」と判示しました。休憩時間については、差額の支払い(1〜2時間)を命じました。 本事件は、「誰もみていないからといって、本人の申告がすべて認められるわけではない」という見本例です。しかし、そうはいっても、裁判対策として、会社ができる限りデータを揃えておくことがよいのは、いうまでもありません。
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