判例 受動喫煙症で損害賠償を請求 (2017年6月号より抜粋)  
   

 

 
 

安全配慮義務違反ない 十分な回避措置を講じた

本事件では、「受動喫煙症」という耳新しい用語が登場します。従業員は診断書を提出して会社に対応を求めましたが、最終的には損害賠償の支払をめぐって裁判で争うことになりました。会社が段階的に禁煙・分煙措置に取り組んでいたことから、裁判所は「安全配慮義務に違反したとまでは認められない」と判示しました。

Sハウス事件 大阪地方裁判所(平27・2・17判決)


タバコの紫煙をめぐるトラブルは、昔からありました。法律が整備される以前は、非喫煙者の側が「わずかの我慢もできない、大人げない人間」のようにみられがちでした。しかし、飛行機や列車の禁煙措置に象徴されるように、時代は大きく変わりました。

しかもく最近では、「受動喫煙症」などという病名で、病院が診断書を出してくれるようです。「診断書」を提出されれば、さすがに会社も放置しておけません。

受動喫煙症とは、「日本禁煙学会と禁煙推進医師歯科医師連盟受動喫煙の診断基準委員会が連名で定めた病名」ということです(ウィキペディア)。

次のような症状があるか否かが基準になります。

  1. タバコの煙に曝露後に目・喉・脳血管の刺激症状、吐き気、動悸などの症状が発生

  2. 煙の発生停止、除去により症状が消失

  3. 煙がない場合には非発症

本事件では、平成16年入社の従業員Aさんが再三、会社に対して喫煙問題の改善を訴えていました。会社もそれなりに対応していたのですが、平成20年に至って、Aさんは受動喫煙症の診断書を提出し、損害賠償を求めるという手段に訴えました。

争いの場は最終的に裁判所に移されましたが、判決では、会社側の対応の経緯を検討した後、安全配慮義務に違反しないと結論付けました。会社側は数次にわたって措置を講じていますが、主のものを列挙すると次のとおりです。

  • 平成15年の健康増進法の施行を受け、喫煙所を設けビニールの暖簾(のれん)等で仕切る

  • 平成17年には、Aさんと産業医の面談を受け、作業場所の禁煙を実施

  • 平成20年の診断書提出を受け、禁煙スペース内の粉じん濃度測定、警備室の換気扇のそばの隙間を密封等

Aさんは、会社側の「安全配慮義務違反」を主張しました。しかし、安全配慮義務は「安全と健康そのものを請け負う債務ではなく、その目標のために諸々の措置を講ずる債務にとどまる」(菅野和夫「労働法」)といわれます。

受動喫煙症が発症したとしても、会社が「危険を予知し、回避措置を講じて」いれば、義務違反を免れます。

平成27年には、改正労働安全衛生法で受動喫煙の防止措置が努力義務化されています。トラブル発生に備え、「会社として何を行ったか」、キチンと説明できる体制を整えておくことが肝要です。

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