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試用期間中の平均賃金 (2017年7月号より抜粋) | |
試用期間が終わる直前にケガをした場合に平均賃金の計算方法は? |
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Q |
当社では、3ヵ月の試用期間を設けています。新入社員が試用期間終了の直前にケガをし、事故の翌日に1日休ませました。休業補償を行いますが、雇用期間が3ヵ月に達していません。平均賃金の計算は、「事由発生日以前3ヵ月間」を対象とします。今回のケースでは、どのように算定すればよいのでしょうか。 |
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A |
3か月未満でも締切日起算する 従業員が業務上の傷病で休業した場合、事業主は「平均賃金の60%以上」の休業補償を支払う義務があります(労基法第76条)。休業4日目からは、労災保険で肩代わりされますが、最初の3日は事業主負担です。 補償額の計算ベースとなる平均賃金ですが、原則として「算定事由の発生した日以前3カ月間に支払われた賃金総額を、その期間の総暦日数で除して」算出します(労働基準法第12条1項)。 事由の発生した日は、業務上傷病の場合、「事故発生の日または診断によって疾病の発生が確定した日」です(労基則第48条)。ただし、月給制等で賃金の締切日があるときは、事由発生日でなく、「直前の賃金締切日」から起算します(労基法第12条2項)。 ですから、賃金締切日の位置にもよりますが、最長で4ヵ月近くの雇用期間がないと、法律の原則どおりの方法では平均賃金の計算ができない理屈です。 平均賃金は、「通常の生活賃金をありのままに算定する」のが基本ルールです。生活実態を正確に反映できないときは、各種の例外措置が適用されます。 例外の第1は、試用期間の取扱いです。試用期間中は、本採用後と比べ、賃金レベルが低めに設定されるケースが少なくありません。 このため、平均賃金を計算する際には、「試みの使用期間」中の日数および賃金は除外すると規定されています(労基法第12条3項)。 しかし、ご質問は「試用期間中」のケガです。そうした場合には、「法第12条3項の規定にかかわらず、試用期間中の日数・賃金により平均賃金を算定」します(労働基準法施行規則第3条)。 例外の第2は、雇用期間が3ヵ月に満たないときの取扱いです。この場合、「算定対象期間は雇入れ後の期間とする」という例外が設けられています(労基法第12条6項)。賃金締切日があるときは、やはり「直前の賃金締切日から起算」します(昭23・4・22基収第1065号)。 しかし、対象期間があまりに短いと、賃金締切日起算というルールが妥当性を欠くケースもあり得ます。 都道府県労働局長が労基法第12条1項〜6項により適正に平均賃金を計算できないと認めるときは、厚生労働省労働基準局長が定める基準に従って平均賃金を算定します(昭24・労働省告示第5号)。 解釈例規では、「直前の賃金締切日から起算すると未だ1賃金算定期間に満たないときは、事由の発生日から計算を行う」という考え方が示されています(昭27・4・21基収第1371号)。
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