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判例 現職場へ復帰できない場合の解雇 (2017年8月号より抜粋) | |
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家族と生活したい 配慮義務なく解雇有効 私傷病による休職者が復職する際、さまざまな配慮か必要になります。本事件で、従業員は「家族の支援が必要なので、実家近くの事業所に配転してほしい」と要望しましたが、会社は「現職場への復帰命令違反で解雇」という処分を下しました。裁判所は、特殊分野の技能職である点等も考慮し、配慮義務違反はないと判示しました。 M重工事件 東京地方裁判所(平28・1・26判決) 正常な労務の提供ができない状況が続けば、使用者は解雇等の措置を講じるほかありません。しかし、病気で休職した場合、一定の配慮がなされるのが普通です。 大多数の会社の就業規則には、特に正社員等を対象として私傷病休職の規定が置かれています。病気休職とは、「傷病による欠勤が一定期間に及んだときに行われるもので、制度の目的は『解雇猶予』である」と解説されています(菅野和夫「労働法」)。 期間が満了すれば解雇(退職)という扱いになりますが、会社としても復職に向けて、一定の配慮を尽くす必要があります。特に、メンタルヘルス不調については、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平21・3・23基安労発第0323001号)が策定され、細かな配慮事項が示されています。 本事件は、まさにそのメンタルヘルス不調による休職者(Aさん)が、主人公です。Aさんは、航空機・宇宙機器等の製作所(B社)に採用され、技能職として勤務していました。しかし、精神疾患により休職となり、勤務先とは遠く離れた実家で療養していました。 症状がある程度回復したので、復職を求めましたが、その際、「現住所(実家)から通勤可能な範囲の事業所への転勤」を条件として提示しました。しかし、B社では原職場以外に適当な配転先がないため、希望に応じることができません。Aさんが転勤に固執し、出社拒否を続けたことから、最終的に解雇処分が下されました。 Aさんは、「同居の家族による生活支援が不可欠であることを前提に異動を求めているのであるから、債務の本旨に従った労務提供の申し出をしており、会社はこれに配慮すべき法的義務がある」と主張しました。 これに対して、裁判所は「B社では、担当製品が異なると必要なスキルも異なるため、技能職が別の事業所の技能職として配転された事例もない(ちなみに、Aさんサイドは事務職転換も検討すべきとしていました)」「就業上の配慮はともかく、食事、洗濯、金銭管理等の支援をどうするかは本来的に家族内部で検討・解決すべき課題である」と述べ、原職復帰命令は相当という判断を下しています。従って、解雇は権利濫用という原告側主張も退けられました。 本事件では、職種・勤務地限定と明確に定めていませんでしたが、実質的にそれと同様の事情にあった点が大きく影響しました。仮に職種転換・転勤ありの総合職であったら、また違った結論となった可能性も否定できません。
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