通院と通勤災害 (2017年9月号より抜粋)
出社前に病院に行く途中で事故に遭った場合に通勤災害の申請可能?
Q 朝、従業員から連絡があり、「病院に寄ってから出社するので、時間単位年休を取りたい」といいます。そこで、ふと疑問を感じたのですが、病院に行く途中で事故にあった場合、通勤災害の申請が可能なのでしょうか。あるいは、病院を起点として、会社へ向かう途上の事故のみが補償の対象になるのでしょうか。
A 逸脱中を除き労災保険の保護の対象となる
通勤災害は社外で発生し、業務と直接的な関連性はありませんが、労災保険の保護対象とされています。制度創設時の報告書では、「産業の発展、通勤の遠距離化等のためにある程度不可避的に生じる社会的な危険であり、労働者の私生活上の損失として放置されるべきでない」とその必要性を述べています。
住居と会社間を移動中の事故等が対象になりますが、「就業に関し(つまり、出勤・退勤するために)移動」することが条件となっています。途中で目的が変わり、たとえば、退勤途上で飲みに行ったりすれば、その時点で通勤の性格を失います。
労災保険法では、「逸脱・中断後の移動は通勤としない」(第7条3項)と表現しています。ただし、次の行為に関しては、「逸脱・中断の間を除き」保険給付が行われます(労災則第8条)。
- 日用品の購入その他
- 職業訓練等
- 選挙権の行使
- 病院等での治療
- 親族の介護
ちなみに、⑤の親族の範囲については、従来、「孫、祖父母、兄弟姉妹」については「同居・扶養すること」が条件となっていました。しかし、平成29年1月1日から、同居・扶養要件が撤廃されています。
ご質問のケースは、④の「病院等での治療」に該当します。この場合、自宅を出て通勤経路を逸脱するまで、および元の通勤経路に復して会社に向かう途中の事故について、労災保険が適用されます。病院が通勤の起点となるわけではありませんのでご注意ください。