判例 求人広告と異なる契約と雇止め (2018年3月号より抜粋)  
   

 

 
 

求人票と内容が異なる 雇止めの効力は生じない

求人広告と労働契約の内容は、本来、同一であるべきです。本事件では、無期雇用の仕事に応募したのに、採用時には1年の有期・65歳定年という条件にすり替わっていたというものです。本人は労働条件通知書に署名押印していましたが、裁判所は「自由意思に基づくものでない」と認め、雇止めは無効と判示しました。

ディサービスA社事件 京都地方裁判所(平29・3・30判決)


解説に入る前に、法改正情報を一つご紹介します。

求人者は、人集めのために「粉飾した労働条件」を提示しがちで、求人広告と実際の労働条件の「落差」をめぐるトラブルが頻発しています。

このため、平成30年1月1日から職業安定法が改正され、求人情報に関する規制が強化されました。その中に「求人情報で示した労働条件の変更手続き」があります。求人者等は、求人時に提示した労働条件と労働契約時の労働条件通知書の内容に違いがあるときは、「求職者が認識できるように書面等で明示する義務」が課されています(職安法第5条の3第3項)。

本事件は、そうした法整備がなされる前のものです。

64歳のAさんは、ハローワークで「デイサービス事業所の管理責任者」の求人票を閲覧し、応募しました。求人の労働条件に「雇用期間・定年の定め」はなく、面接でも異なる説明がないまま、採用に至りました。

会社(B社)は労働条件通知書を提示し、Aさんはその裏面に署名押印しましたが、その内容は求人条件とは大きく異なるもの(有期・定年付き)でした。

その後、B社は労働条件通知書の契約内容に従い、雇用契約を解除しました。

Aさんは、「自己の労働契約が求人票の記載どおり期間の定めのないものであり、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認」等を求めて、裁判を提起しました。

裁判所は、まず求人票や採用時の説明内容等をふまえ、「本件労働契約は、採用通知日を始期とする期間の定めのない契約および定年制のない労働契約として成立した」と認定しています。

そのうえで、「期間の定め、および定年制のない労働契約を、1年の有期契約で、65歳を定年とする労働契約に変更することは、原告の不利益が重大である」と述べました。

求人と異なる労働条件通知書への署名押印については、「B社代表者が提示した時点で、Aさんは既に従前の就業先を退職しており、これを拒否すると完全に収入が絶たれると考え」、やむなく応じたものであると判断しました。

署名押印が「その自由な意思に基づいてなされたものといえない」以上、変更の同意があったとは認められず、契約の解除は無効という結論が導き出されました。

本件の労働条件変更は「あまりに重大で論外」という感じですが、法整備の強化等を踏まえ、些細な変更であっても十分な説明と合意の取得が不可欠といえます。

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