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解雇予告の適用除外 (2018年4月号より抜粋)

試用社員が遅刻を繰り返すため予告なしで即時解雇したいが可能か

 

Q 新規採用した社員ですが、入社面接での態度は特に問題なしでした。しかし、実際に入社した後は、何度も遅刻を繰り返します。定時に滑り込みで出社してきても、午前中はもうろうとした状況の日があります。当社では3ヵ月の試用期間を設定していますが、予告手当なしの解雇が可能なのでしょうか。

 

A 14日過ぎれば解雇予告の義務あり

 
正社員の場合、試用期間を設ける例が少なくありません。試用期間は、一般には「従業員としての適格性を判断する」ための期間です。

 

有名な判例では、「採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状況等により、その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断」される場合に、解約権を行使できると述べています(三菱樹脂事件、最判昭48・12・12)。

 

ご質問のケースで、入社後に判明した態度不良が「解約することが客観的に相当といえる」レベルに達しているか否かは、慎重に判断する必要があります。

 

仮に解約もやむを得ない状況の場合、ご質問にあるように即時解雇ができるのでしょうか。

 

労働者を解雇する場合、労働基準法では「30日前までに予告」する義務を課しています(第20条1項)。

 

1日について平均賃金相当の解雇予告手当を支払えば、その日数分、予告期間を短縮することもできます(同条2項)。

 

ただし、次の4種類の労働者は、適用除外とされています(労基法第21条)。

 

  1. 日々雇入れられる者
  2. 2ヵ月以内の期間を定めて使用される者
  3. 季節的業務に4ヵ月以内の期間を定めて使用される者
  4. 試の使用期間中の者

 

4.の「試の使用期間中の者」については、「14日を超えて引き続き使用されるに至ったときは、この限りではない」というただし書きが付されています。

 

試用期間の長さは、1ヵ月から6ヵ月程度が一般的です。法律的には、試用期間の長さについて具体的な規定は設けられていません能力等を見極めるのに長期を要する職種等の場合には、1年等に及ぶケースもみられます。

 

14日の試用期間は、いかにも短いという感じですが、企業が独自に定めている試用期間の長さと労基法第21条の規定の関係について、解釈例規では次のように説明しています(昭24・5・14基収第1498号)。

 

「労基法第21条は、試用期間中の者であっても、その期間が14日を超えた場合は解雇予告の義務を除外しないこととしたものである。したがって、会社で定めている試用期間のいかんにかかわりなく、14日を超えれば解雇予告もしくは予告手当の支払いを要する」

 

ご質問にある新卒社員が既に入社後14日を経過している場合、30日分の予告手当を支払わないと即時解雇できません。