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休業補償は賃金ではない (2018年4月号より抜粋)

ケガをした従業員に休業補償を支払うが労働保険の計算対象に?

 

Q 新入社員が慣れない作業中にケガをして病院に行き、翌日は1日休業しました。当社では、こうした場合、年休を消化するのが普通ですが、新入社員のため年休がありません。業務上の負傷ということで休業補償を支払いますが、これは賃金ではなく、労働保険料の計算には関係ないという理解でよいのでしょうか。

 

A 上乗せ分を含め賃金に該当しない

 

労働者が仕事中にケガをした場合、労災保険から休業補償給付が支給されます。休業補償給付は賃金(給付基礎日額)の60%ですが、賃金の20%相当の休業特別支給金が上乗せされます。ただし、休業補償給付・特別支給金が出るのは、休業第4日目からです。

 

最初の3日間は、使用者(事業主)が平均賃金の60%の休業補償を支払います。

 

お尋ねにあるように年休として処理した場合、支払われるお金は賃金です。一方、休業補償は災害補償であって、賃金とは異なります。労働基準法の条文上も、「療養のため賃金を受けない場合において、休業補償を行う」(第76条)という文言となっています。

 

ですから、労基法どおりに平均賃金の60%を支払った場合、これが賃金に該当せず、労働保険料の関係でも算定ベースに含まれないのは明らかです。

 

しかし、労災保険で80%の給付が行われている点を考慮し、会社として「もう少し手厚い補償をする」という方針を採ることも考えられます。

 

この場合、60%は休業補償で、法定義務を上回る20%は賃金という分類になるのでしょうか。この点について、解釈例規では次のように述べています(昭25・12・27基収第3432号)。

 

「平均賃金の60%は法定の最低基準と考えるべきで、事業場でそれを上回る制度を設けている場合は、その全額を休業補償とみるべきである」

 

ですから、上乗せで支払うときも、すべて賃金でないという扱いになります。