歩合給の割増賃金の計算方法 (2018年5月号より抜粋)
歩合給制を導入したいが正確な割増賃金の計算方法を知りたい
Q 営業部門の活性化のため、一部、歩合給の導入を検討しています。歩合給を上乗せするので、基本給は引き下げざるを得ません。こうした調整作業に伴い、割増賃金の算定基礎単価を再計算する必要が生じます。歩合制を併用する場合、割増賃金の基礎単価はどのように計算するのが正しいのでしょうか。
A 総労働時間を対象に計算
時間外・休日・深夜労働が生じた場合、使用者は割増賃金を支払う義務を負います(労働基準法第37条)。割増率は次のとおりです。
- 時間外…25%(適用猶予を除き月60時間超は50%)
- 休日…35%
- 深夜…25%
この割増率を乗じるのは、「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額(割増賃金の算定基礎額)」です。その金額は、賃金の定め方により異なります。
月給制のときは、「月額を、月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間における1月平均所定労働時間)で除した金額」です(労基則第19条1項5号)。ですから、年1回の定昇の際、その年(年度)のカレンダーもみながら、個々の従業員の割増単価を算出するのが普通です。
たとえば、基本給が17万円で1月平均所定労働時間が170時間だったとすると、算定基礎額は1,000円です。
貴社では、このたび、歩合給の導入を検討されているとのことです。歩合給(出来高払制その他の請負制によって定められた賃金)については、算定基礎額の計算方法が別に定められていて(同項6号)、「賃金算定期間において出来高払制その他請負制によって計算された賃金の総額を総労働時間数で除した金額」を用います。
こちらは、毎月、計算を実施する必要があります。たとえば、所定労働時間168時間の月に12時間の残業があり、歩合給が3万6,000円だったとします。
歩合給の額をその月の総労働時間(168時間+12時間=180時間)で除します。算定基礎額は200円となります。
それでは、この月の割増賃金額を計算してみましょう。まず、基本給に対応する部分は次のとおりです。算定基礎額1,000円×割増率1.25×12時間=1万5,000円
次に、歩合給に対応する部分です。こちらで注意すべきなのは、割増率が125%でなく、25%になる点です。「出来高払制等による場合、時間当たり賃金、すなわち1.0(100%)に該当する部分は、既に基礎となった賃金総額に含まれているから」です(平11・3・31基発第168号)。
算定基礎額200円×割増率0.25×12時間=600円
割増賃金額は1万5,000円+600円=1万5,600円となります。歩合給に対応する割増賃金は、額としては大きくないですが、キチンと計算して加算しないと労基法違反になります。