健康保険証がまだ届かない場合 (2018年5月号より抜粋)
入社直後で健康保険証が手元にないが前職当時のものを使用できないか
Q 従業員を中途採用しましたが、本人は慢性の病気で定期的に通院しています。入社直後で、まだ当社では健康保険被保険者証を受け取っていません。今月一杯は病院で被保険者証の提示を求められませんが、そのまま治療を受けさせてよいのでしょうか。
A 前職の保険証は使えない。資格証明の手続きを取るとよい
健康保険の適用事業所に使用される人は、適用除外に該当しない限り、被保険者資格を取得します(健保法第3条1項)。資格取得届は入社から5日以内に提出します(健保則第24条)が、提出日に関係なく入社日に資格を取得します。
協会健保等で新しい資格を取得すれば、それ以前の資格は失効します。ですから、古い被保険者証を使って診療を受けることはできません。
しかし、お尋ねのケースでは、まだ新しい被保険者証が発行されていません。この場合、対応として2種類が考えられます。
第1は、「被保険者資格証明書」の発行手続きを採る方法です。入社してすぐの従業員または被扶養者が早急に医療保険で受診する予定がある場合、被保険者証の代わりとなる証明書の発行を受けることができます(健保則50条の2)。
事業主または被保険者本人が、事業所の所在地を管轄する年金事務所で手続きします。新しい被保険者証が発行されたら、資格証明書は返納します。
第2は、療養費の申請を行う方法です。健保で受ける治療は現物給付が原則ですが、やむを得ない事情があるときは、本人が全額を支払い、後で健保から払い戻しを受けることもできます(健保法第87条)。
就職し、被保険者証の交付を受ける前に病気になった場合も、この療養費制度の対象となります。
被保険者は、「療養費支給申請書」に医師の領収明細書などを添付し、協会けんぽ都道府県支部に提出します(健保則第66条)。病状の急変など第1の方法が間に合わないときは、第2の方法によることになります。