死傷病報告の提出義務者 (2018年6月号より抜粋)
派遣社員が業務災害に遭った場合に派遣先として必要な届出は?
Q 当社の作業場内で、派遣社員が転倒してケガをしました。労災保険は派遣会社(派遣元)のものを使うようですが、死傷病報告の取扱いはどうなるのでしょうか。状況によっては、第三者行為災害届が必要になるとも聞きますが、どういうことでしょうか。
A 派遣について、「雇用と使用が分離している」という表現が使われることがあります。雇用主は派遣元だけれど、実際に使用(指揮命令)しているのは派遣先という意味です。
難しい話は抜きにして、派遣労働者がケガをしたとき等には、どちらの事業主が処理する責任を負うかという問題が生じます。
労災保険については、ご質問にあるとおり、「派遣元が適用事業となる」(昭61・6・30基発第383号)とされています。
しかし、死傷病報告については、派遣先・派遣元のいずれにも提出義務が課されています。提出先は、派遣先・元それぞれを管轄する労働基準監督署です。
ただし、派遣先で事故が起きた場合、派遣先は死傷病報告書の写しを、遅滞なく派遣元に送付するものとされています(派遣則第42条)。
労働者がケガをしたとき、派遣労働者と機械の接触など加害者が明確なケースとそうでないケースが存在します。
加害者(同僚等)がいれば、当然、第三者行為災害届を提出します。直接の加害者が存在しないケース(派遣労働者が自分で転んだ等)は、基本的には第三者行為災害に該当しません。ただし、次の場合は例外とされているので、注意が必要です(平24・9・7基発0907第4号)。
- 派遣先が安衛法令違反で送検され、その違反が災害の直接原因となったとき
- 調査や監督時に安衛法令違反が指摘され、その違反が災害の直接原因となったとき
この場合、第三者行為災害届の提出が求められる可能性があります(求償の対象になるケースも)。