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雇止め直前の労災と休業補償 (2018年7月号より抜粋)

雇止め直前のパートがケガをしたが休業補償はいつまで必要か

 

Q 雇止めが決まっていたパートさんですが、最終日に転倒してケガをしてしまいました。しばらくは病院に通う必要があるようです。業務上のケガの場合、解雇に制限がかかると聞きます。予定どおり、翌日、雇止めという処理で問題ないのでしょうか。この場合、休業補償は1日分で足りるのでしょうか。

 

A 退職後も補償義務は残る

 

まず、雇止めと解雇の関係から確認していきます。労働基準法では、「業務上の傷病により、療養のために休業する期間およびその後30日間は、解雇してはならない」と規定しています(第19条)。

 

休業中に、有期労働契約の期限が到来するとします。「労働契約は、引き続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限りその期間とともに終了し、傷病のため休業中の者の労働契約も同様であり、労基法第19条(解雇制限)の適用はない」と解されています(昭23・1・16基発第56号)。

 

ご質問では、「既に雇止めが決まっていた」というのですから、予定どおり期間満了で退職という処理で問題なく、契約を更新する必要はありません。

 

次に、休業補償の問題ですが、労災保険の休業補償給付は「傷病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給」されます(労災法14条)。最初の3日間を待期期間と呼びます。

 

この3日間については、事業主が労基法に基づき休業補償を行わなければなりません(第76条)。休業補償は、平均賃金の60%とされています。

 

お尋ねにあるパートさんは、ケガをした翌日時点で円満に雇用関係は解消されています。つまり、翌日以降は貴社の従業員ではありません。

 

しかし、労基法で定める補償を受ける権利は、「労働者の退職によって変更されることはない」と定められています(第83条)。ですから、仮に傷病により働けない状態が継続すれば、貴社は退職日以降の分も含めて3日分の休業補償を支払う義務を負います。

 

3日の待期期間が経過しても、労務不能と判断されれば、次は労災保険の請求となります。

 

こちらについても、労災保険で定める「給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」という規定が存在します(第12条の5)。

 

休業補償給付の請求書には、①傷病の発生年月日、②災害原因・発生状況、③平均賃金、④休業の期間等を記載し、事業主の証明を受けます(労災則第13条)。事業主は、退職した方についても証明を行うなど必要な協力を行うべきとされています(事業主の証明がなくても、請求ができないわけではありませんが)。

 

ただし、初回に①~③の確認ができれば、2回目以降は事業主の証明を受ける必要はありません。

 

ですから、貴社としては、少なくとも初回の請求までは責任を持ってサポートしてあげてください。