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計画年休取消と賃金 (2018年8月号より抜粋)

夏季の計画年休を取得できなかった従業員にどのような補償が必要か

 

Q 当社では、夏季に計画年休により2日の休暇を与えています。今夏は仕事が忙しかったため、一部の従業員に出社をお願いし、何とか同意を得ました。しかし、当月の給与明細をみて、「休日出勤分が上乗せされていない」と不満を訴えています。休暇の取消で、追加の賃金支払いが必要になるのでしょうか。

 

A 事後の速やかな休暇付与が必要

 

形としては、毎年、夏季休暇として休んでいた日に出勤を命じられたわけです。従業員にしてみれば、「休日出勤」と同じ気分でしょう。

 

計画年休が予定されていた日は、そもそもどういう性格の日なのでしょうか。年休は、「労働義務がない日については請求する余地がない」とされています(昭24・12・28基収489号)。つまり、年休の計画付与日として指定する日は、もともと「所定労働日とされていた日」です。

 

計画年休を取り消した場合、その日は「通常の労働日(出社義務のある日)」として取り扱われます。休日出勤ではないので、追加の賃金支払いは必要ありません。

 

従業員は、「それでは、予定どおり休めた人と比べると、不公平だ」と反論するでしょう。しかし、計画付与で休んだ人は、年休の付与残日数が2日減ります。お尋ねの従業員については、この2日分の権利が残っています。

 

ですから、夏季休暇の時期が過ぎた後、できる限り早い時期に2日分の年休請求を認めるという方法で、問題の円満な解決を図るべきでしょう。

 

賃金に関する説明は以上のとおりですが、そのほかに「年休の取消」という問題も検討しておく必要があります。

 

年休の計画的付与を行う際には、過半数労組(ないときは過半数代表者)と労使協定を結びます(労基法第39条6項)。貴社では、全社一斉付与という形を取っているので、協定では「具体的な年次有給休暇の付与日」を定めます。

 

協定により付与日を決定した後は、指定日に就労させる必要が生じても取消はできません。「労働者の時季指定権および使用者の時季変更権はともに行使できない」(昭63・3・1基発150号)とされています。

 

通常の年休であれば、本人の納得を得たうえで、請求を取り下げてもらうことも可能です。

 

しかし、計画年休の付与日を会社の都合に基づいて変更することは、厳密にいうとルール違反です。

 

前記の通達では、「特別の事情により年休付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、協定を結ぶ際、対象から除外する」等の対応を求めています。

 

ですから、本来的にいえば、年休付与日に出勤させる必要が生じたときは、労使協定を変更し、除外者を定める等の手続きを取る必要があります。次年度以降は、「事業の正常な運営を妨げる事由が生じて変更する場合」の取扱い等もあらかじめ定めておくのが良いでしょう。