随時改定の特例 (2018年9月号より抜粋)
仕事繁忙時に昇給すると標準報酬月額が大幅アップするが対応策は?
Q 当社では、毎年、秋に昇職人事を発表します。昨年の話ですが、たまたま昇職した時期に大口契約を獲得し、歩合が跳ね上がった営業社員がいました。このため随時改定に該当し、社会保険料もアップする結果となりました。今年も同様の事案が発生しないか心配していますが、何か対応策はないのでしょうか。
A 年平均で修正可能に
随時改定は、次の3つの条件を満たすときに実施されます(健保法第43条)。
①昇(降)給などで固定的賃金に変更があったとき
②変動月以降3ヵ月の報酬の平均額と現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき
③3ヵ月とも支払基礎日数が17日(社会保険適用拡大の対象者は11日)以上あるとき
固定的賃金(お尋ねのケースでは役職手当の加算)だけではなく、非固定的賃金(お尋ねのケースでは歩合給)も含め、2等級以上の差が生じれば、随時改定の対象となります。これは、直近の賃金実態(総額)を正確に反映するという趣旨に基づくものです。
ですから、一般には「ちょうどその時期に歩合給が増えたから」といういいわけは、通用しません。ただし、平成30年の10月から新しい調整の仕組みが導入されるので、ご紹介します(平30・3・1保発第8号)。
対象として昇給と降給のパターンが挙げられていますが、昇給の方をご紹介しましょう。
要件は2つの部分に分解できます。
①算定月額から算出した標準報酬月額による等級と、昇給月以後の継続した3ヵ月の間に受けた固定的賃金の月平均額に昇給月前の継続した9ヵ月および昇給月以後の3カ月の間に受けた非固定的賃金の月平均額を加えた額から算出した標準報酬月額による等級の間に2等級以上の差を生じた場合
②前記の差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合
なんだか複雑ですが、要するに非固定的賃金については、3ヵ月平均ではなく、1年(9か月+3ヵ月)の平均を使おうという考え方のようです。特定時期に歩合や割増が急増しても、1年平均にならせば、その影響は薄められます。
前記の条件を満たすときは、単純な3ヵ月平均ではなく、非固定的賃金については年間平均を基礎に算定した金額に基づいて、標準報酬月額の改定を実施します。
どこかで聞いたような話ですが、実は毎年の定時決定については、よく似た仕組みが平成23年からスタートしています(平23・3・31保発0331第17号)。今回は、それを随時改定に拡大したものといえます。
注意が必要なのは、②の要件で非固定的賃金の激増が「業務の性質上例年発生する」と述べている点です。お尋ねの営業社員の大口契約獲得が、「例年この時期に発生する」かどうかが問題になります。「たまたま」であれば、救済措置の対象にならないので、注意が必要です。