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死傷病報告の提出義務 (2018年9月号より抜粋)

事故でケガをした従業員に年休を取得させたが労災隠しに該当か

 

Q 小さな建設会社を営んでいますが、業務上の事故で従業員が足をひねりました。大事を取って、翌日は年休で休んでもらうという対応を取りましたが、元請会社には連絡していません。後から、「労災隠し」などといわれる可能性があるのでしょうか。

 

A この場合は報告不要

 

「労災隠し」とは、業務上の死傷事故が生じたにもかかわらず、「労基署への死傷病報告(安衛則97条)の提出を怠る、または虚偽の報告をする」ことをいいます。労働安全衛生法100条(報告等)違反で、50万円以下の罰金の対象になります。

休業日数が1日以上4日未満のときは、「4半期報告(様式第24号)」を提出します。

ご質問の従業員は、事故の翌日に会社を休んでいます。休業の事実を隠ぺいする目的で、年休処理をしたのなら問題ですが、客観的に「それほどでもないケガだけれど、大事を取って年休を消化させた」というのであれば、報告は不要でしょう。

今回は1日の休業ですが、建設業等では2日・3日のケガも年休で処理し(死傷病報告は未提出)、後になって従業員が労基署に駆け込み、トラブルになるケースもあります。ケガの程度をみて、どのように対応するか、慎重に判断する必要があります。

次に、「元請に連絡していない」という点ですが、請負事業のときは元請の労災保険を使うのが原則です(徴収法第8条)。休業が4日以上となれば、当然、元請と相談して対応することになります。

休業3日以下のときも、「請負事業の災害補償については、元請人を使用者とみなす」と規定されています(労働基準法第87条)。ただし、書面による契約で、下請人に補償を引き受けさせることも可能とされています(同条2項)。

今回は年休という形で処理をしましたが、安全管理体制のチェックという観点から、元請・下請の協議組織等の場で、事故の事実を報告し、今後の再発防止策等を検討するのが良いでしょう。