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年休の権利(2018年11月号より抜粋)

雇止めの日までにパートの年休残日数を消化できないときどうする?

 

Q 1年ごとの契約更新で受注生産を行っていましたが、今回の期限満了をもって打切りと決まりました。担当部門のパートについては、雇止めとせざるを得ない状況です。30日前に予告し、年休消化を呼びかけましたが、年休の残日数が出勤日数を超えるパートもいます。余った分の年休はどう処理すべきでしょうか。

 

A 未消化分は消滅する

 

有期労働契約は、期間満了とともに終了します。しかし、雇用期間が長期化すると、契約解消をめぐって労使間で紛争が生じるおそれがあります。このため、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平15厚労省告示第357号)により、雇止め時等のルールが定められています。

 

告示第1条では、「契約を3回以上更新し、または1年を超えて勤務している者(更新がない旨、明示されている者を除く)」を対象として雇止めの予告義務を定めています。予告は、契約期間満了の30日前までに行う必要があります。

 

貴社では、告示どおりに30日前の予告を行いましたが、「年休の残日数が出勤日数を超える」パートがいるということです。

 

労基法では賃金その他の権利について、2年の時効を定めています(第115条)。年休の権利についても労基法第115条の適用があり、付与後1年以内に未消化の分は翌年に繰越しできます。

 

ですから、たとえばフルタイムで勤続3年6ヵ月の従業員の場合、最大で26日(12日+14日)の年休が残っている計算となりますが、年休は「労働義務のない日については請求する余地がない」(昭24・12・28基発第1456号)とされています。30日のうち所定労働日数は20日前後ですから、全部消化できない可能性もあります。

 

それでは、未消化となった年休の権利は、どうなるのでしょうか。この点に関しては、30日前の解雇予告に関する解釈例規ですが、「年休の権利は予告期間中に行使しなければ消滅する」という見解が示されています(昭23・4・26基発第651号)。

 

雇止めの予告についても、理屈は同様と考えられます。しかし、会社都合によるやむを得ない雇止めなので、残日数分を金銭で補償する等の対応が望ましいのはいうまでもありません。

 

「やむを得ない雇止め」という点について、補足で説明を加えておきましょう。告示に基づいて30日前の予告を行っても、「雇止めの法的効力に影響を及ぼすものではない」とされています(平15・10・22基発1022001号)。

 

つまり、雇止めが有効か否かは、別に労契法第19条に則って判断されます。労働者が契約更新を望む場合、それを拒否する客観的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、雇止めは無効とみなされます。会社として雇止めを決断する際には、対象となるパートの方が「受注打切りとなった製品の生産に専従」する約束だったか否か等の事情も考慮する必要があるでしょう。