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損害賠償との調整(2019年1月号より抜粋)

従業員が業務中にケガをしたが見舞金を払うと労災給付に影響あるか

 

Q 従業員が業務上のケガで、入院しました。人事部門として、補償手続きを進めると同時に、ご家族の方にも誠意を示したいと考えています。こうした場合、前任者はお見舞金を持参していました。しかし、労災補償が決まる前に「軽々にお金を渡すべきでない」という話も聞きます。実務的にみてどうなのでしょうか。

 

A「上乗せ」で支給が可能


業務上の事故が起きた場合、従業員は労災保険から給付を受けられる一方、加害者等に対して補償を求めることもできます。

事故の原因が第三者によるものの場合、労災保険法第12条の4により、調整が行われます。一方、事業主と従業員の間の取扱いについては、労災保険法附則第64条に規定があります。

同条2項では、「労災保険の保険給付を受けるべきときに、同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる」と規定しています。

簡単にいえば、労災保険手続と損害賠償請求を同時に行っても、両方を受け取れるわけではなく、調整が行われるということです。

調整の対象となるのは、「損害賠償額のうち、労災保険給付によって填補される部分」に限られます。具体的な処理基準に関しては、解釈例規(昭56・6・12発基第60号)が示されています。

対応関係は、次のとおりとなっています。

障害補償給付・遺族補償給付・傷病補償年金・休業補償給付…逸失利益・療養補償給付…療養費・葬祭料…葬祭費用ご質問にある見舞金に関しては、「単なる見舞金等民事損害賠償の性質を持たないものについては、労災保険給付の支給調整を行わない」とされています。

ちなみに、企業内補償(いわゆる上積み補償)や示談金・和解金等についても、「労災保険給付に上乗せで支払われる」前提であれば、調整の対象になりません。