中小の猶予措置(2019年3月号より抜粋)
3月末に締結した36協定は「時間外の上限規制の対象」になるか?
Q まもなく時間外・休日(36)協定の締結時季になります。当社は製造業ですが、中小に含まれると認識しています。働き方改革のうち「時間外規制の強化」については、中小を対象に1年の経過措置が設けられています。今回、締結する協定に関しては、改正法の対象にならないでしょうか。
※注:平成31年4月30日以降は平成でなく新元号に替えて下さい
A 算有効期間の起点で判断
働き方改革関連法のうち、改正労労基法の施行は平成31年4月1日です。ただし、時間外規制の強化に関しては、2つの経過措置が設けられています。
第1は大企業(経過措置を受けない企業)を対象とするもので、「平成31年3月31日を含む期間を定めている協定は、なお従前の例による」とあります(改正法附則第2条)。
つまり、大企業であっても、たとえば、平成31年3月21日から同32年3月20日までの期間を定める協定は、改正法の適用を受けません。対象となるのは、「平成31年4月1日以後の期間のみを定めている協定」です(平30・9・7基発0907第!号)。
第2はご質問にある中小企業を対象とするもので、前記の「31年3月31日を32年3月31日と読み替え」ます(改正法附則第3条)。ですから、中小の場合、平成31年の3月中に36協定を結ぼうと、4月になってから協定しようと、どちらも経過措置の範囲内です。
たとえば、協定の期間が平成31年4月21日から同32年4月20日だったとします。平成32年4月1日以降20日間は平成32年度に含まれますが、それは気にせず、「従前の例により」協定を結んで差し支えありません。
ただし、附則第3条2項では、「従前の例によるときも、労使は改正法の上限を勘案して協定をするように努めなければならない」とクギを指している点には、留意が必要です。
改めて、中小の定義を確認しておきましょう。考慮する要素は、資本金(または出資の総額)と常時使用労働者数です。
①小売業…資本金5,000万円以下または労働者50人以下
②サービス業…資本金5,000万円以下または労働者100人以下
③卸売業…資本金1億円以下または労働者100人以下
④その他の業種…資本金3億円以下または労働者300人以下
たとえば、産業医の選任等は「事業場単位」で労働者50人以上であることですが、今回の経過措置は事業(企業)単位です。
貴社は製造業ですから、工場・支店等も含め、企業全体の労働者数が300人以下なら中小に該当します。資本金と労働者数は「または」ですから、労働者数が300人を超えていても資本金が3億円以下なら基準を満たします。
300人の数え方ですが、製造業の場合、労働者派遣や業務請負で働く労働者も多いと思います。しかし、こうした人達は、雇用関係のある人材ビジネス会社の方で人数にカウントします。しかし、出向者は先・元の両方に算入するとされています。