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猶予措置の廃止(2019年4月号より抜粋)

月60時間超の時間外に対する割増率が5割になるが深夜と重なるときは?

 

Q 労基法の改正(時間外上限規制の強化等)に合わせ、「月60時間超の時間外の割増率5割」についても中小を対象とする適用猶予が廃止されると聞きます。そこで素朴な質問ですが、「60時間超の時間外労働が深夜に及んだ場合」、75%の割増率が適用されることになるのでしょうか。あまりに高すぎる気がします。

 

 A 7割5分の支払い必要に

平成22年4月1日に改正労基法が施行され、その際、「月60時間超の時間外労働」には5割の割増率を適用する規定に改められました(第37条1項ただし書き)。


しかし、中小企業を対象として「当分の間、前記の規定は適用しない」という猶予措置が講じられました(労基法附則第138条)。猶予の廃止時期に関しては、「施行後3年経過後に、検討」するとされていました(同平20・附則第3条)。平成25年3月31日(施行後3年)を過ぎても、なかなか結論が出されない状態が続いていましたが、働き方改革関連法の成立により、ようやく廃止時期が決定しました。


平成35年4月1日をもって、附則第138条は削除されます。つまり、中小にも5割の割増率が適用されることになります。
割増率の適用について、改めて確認しておきましょう。


・時間外労働……25%(月60時間超は50%)
・休日労働………35%
・深夜労働………25%


時間外と休日労働は、重複カウントしない規定です。法定休日に働かせた時間が1日8時間を超えても、割増率は35%のままで変わりません。
一方、時間外と深夜、休日と深夜の重複については、労基則第20条に規定があります。


第1項では、「時間外労働が深夜に及ぶ場合は、5割以上(月60時間超の時間外に係るものについては、7割5分以上)の賃金を支払わなければならない」としています。第2項では、「休日労働が深夜に及ぶ場合は、6割以上」と定めています。


第1項のカッコ書きに明記されているとおり、60時間超の時間外+深夜の労働割増率は75%です。「高すぎる」と不満をいっても、法律の規定ですから従うほかありません。


対策としては、代替休暇の活用が考えられます。代替休暇は、既に5割の割増率が適用されている大企業で導入が進んでいます(労基法第37条4項)。


労使が協定を結ぶことにより(労基則第19条の2)、時間外が60時間を超えた分について、割増賃金(25%を超える部分)に代えて、休暇を与えることができます。


代替休暇を利用すれば、月60時間を超える時間外+深夜労働が発生しても、割増率を50%に抑えることができます(時間外部分が通常の25%に下がり、それと深夜25%を合算して50%)。
適用猶予の廃止まではまだ時間があるので、こうした制度の整備も前広に検討しておくのがよろしいでしょう。