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判例 チェックオフの廃止は妥当か(2019年4月号より抜粋)

 

不当労働行為と認定 労組の「弱体化」がねらい

 

 昔から労組のある組織では、労使ともに組合豊のチェックオフは「当たり前」という感覚でしょう。この取決めを、使用者側が一方的に廃止できるのでしょうか。
本事件で、裁判所は、協議を十分に尽くさないまま廃止通告を行ったのは手続き的配慮を欠き、不当労働行為(支配介入)に該当すると判示しました。東京地方裁判所(平30・2・28判決)「

 

IT会社の事件 横浜地方裁判所(平29・3・30判決)


労組のある会社の大多数では、チェックオフは「常識」の範疇に属します。ない会社の担当者のために、最初にチェックオフの基本を確認しましょう。

 

チェックオフとは、労使間の協定に基づき、使用者が労組員の賃金から組合費を控除し、労組に引き渡す仕組みのことです。独自に組合費を徴収する手間が省けるので、労組にとってはありがたい協定です。会社側からみれば、労使関係の安定に資するというメリットがあります。

 

しかし、労使関係の冷え込みにより、使用者側のトップが「便宜供与の廃止を考えざるを得ない」と判断するケースもあり得ます。

 

当然、労組は反対するでしょうから、使用者側の一方的な廃止通告が有効かという問題が生じます。

 

本事件は、O市と職員労組の間で生じたものです。O市では、「不適切な労使関係の払拭のために、便宜供与を原則一律に廃止する」という方針を打ち出しました。

 

それに伴い、協定期間満了まで1ヵ月強という時期に、チェックオフの廃止を通告しました。猶予措置は1年という設定でした。

 

労組側は中央労働委員会に対し、不当労働行為に該当するとして救済申立てをしました。労働委員会がこの申立てを認めたため、O市側がその取消しを求めて裁判を提起したものです。

 

チェックオフも含めた便宜供与は、労組側が当然の権利として要求できるものではなく、使用者側の承諾を要します。ですから、基本的には、期間満了で再更新しないというやり方も可能なはずです。

 

裁判所は、「チェックオフを行うか否かは原則として使用者の裁量に委ねられると解され、その廃止に当たり実態法上の合理的理由までを必要としない」という基本見解を示しました。

 

しかし、その一方で、「チェックオフが労組組織の維持強化に資するものであることからすると、その廃止は団結面の側面において少なからぬ不利益を与える可能性があり」、「その動機が明らかに不当と認められる場合等については廃止が許されないことになる」と述べました。

 

本事件に関しては、「O市は、少なくとも労組の弱体化効果を十分に認識したうえで廃止を行っており、必要な手続き的配慮も行っていない」ことから、支配介入に該当するという判断が下されました。

 

特にチェックオフが長期間継続しているケース等では、十分な説明・交渉を行うと同時に、猶予期間設定等の配慮を尽くさないと、制度廃止はなかなか難しいといわざるを得ないよう
です。