共働き女性の継続勤務と年金  (2003年1月号より抜粋)  
     
  共働き女性が定年後も継続勤務するのは年金面で有利な選択でしょうか?  

Q

当社で、給与計算や社会保険を一手に引き受けていた女性従業員が、近く、定年を迎えます。会社としては、継続雇用を望んでいるのですが本人は、ご主人が比較的高い給料をもらっていることもあって迷っている様子です。退職した場合、しない場合、年金等はどのようになるのでしょうか。

 
   

A

もうすぐ60歳になるということですが、女性の場合、男性に比べ年金はかなり有利になります。男性は、年金の支給開始年齢引き上げが始まっていますが、女性は、その適用が5年遅れるからです。

来年、4月以降に60歳になる男性は、62歳になるまで、満額の年金が出ませんが、女性は報酬比例部分、定額部分、加給年金すべて、要件を満たせば支給されます。

お尋ねのケースで、ポイントになるのが、加給年金の扱いです。加給年金は、原則として本人の厚生年金被保険者期間が240月(20年)以上あり、配偶者と生計維持関係にある場合(配偶者の年収850万円未満)に支給されます。

しかし、配偶者が老齢厚生年金(厚生年金被保険者期間240月以上が条件)をもらえるときは、加給年金が支給停止となります。給与・保険を取り仕切っていたベテラン女性従業員は、恐らく被保険者期間240月以上の要件をクリアしているでしょう。女性の場合、35歳以上の加入期間15年以上でもOKです。

この場合、夫の年収が850万円未満なら(生計維持関係が認められるなら)、配偶者加給年金の受給権が生じます。ただし、奥さんが60歳に達したとき、大部分の家庭では、夫の厚生年金被保険者期間が20年以上あって、既に特別支給の老齢厚生年金をもらっているはずです。

このときは、せっかくの加給年金が支給停止となってしまいます。ですから、夫を対象とした配偶者加給年金をもらっている奥さんは、かなり稀といっていいでしょう。しかし、夫の収入が高く(ただし、850万円未満)、老齢厚生年金が支給停止となっている場合は、話が別です。この場合には、配偶者加給年金が支給されます。

つまり、ご質問にある女性は、60歳の到達時から、報酬比例部分、定額部分、加給年金のすべてが支払われ、加えて夫が高収入という非常に恵まれた状況になるわけです。「無理に継続雇用を選択する必要はない」、そう考えるのも無理ありません。

しかし、だからといって、完全リタイアが有利だとは限りません。在職老齢年金を受けながら働くのも、立派な選択です。特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止とならない限り、問題の加給年金も全額もらえます。この方が、賃金(+高年齢雇用継続給付)、在職老齢年金、夫の収入すべてを足した家計の収入は大きくなります。

後は、働き甲斐も含めた本人の価値判断の問題です。

 

 
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