退職勧奨社員の年休の権利 (2004年1月号より抜粋)  
     
 

不始末で退職勧奨した社員にも請求あれば年休付与する義務がありますか

 

Q

営業職として採用した社員ですが、不注意なミスを繰り返し、顧客を怒らせるケースが続いています。本人と話し合った末、合意退職という結論に達しましたが、本人は就業規則に従い14日後を退職日として指定してきました。さらに残りの期間に年休を取りたいというのですが、認める義務がありますか。

 

 
 

A

退職理由に関係なく認めるべき

長年の顧客を失うような失敗をしでかし、会社に多大な迷惑をかけても、
「人間、誰しもミスはある」などと涼しい顔をしているようなタイプもいます。こういう「職場になじまない」人に対しては、最終的に、解雇も含めた対応を考えるほかありません。

しかし、特に正社員は、解雇権濫用法理で手厚く保護されているので、軽々に解雇処分を取ると、後から法律的トラブルに発展するおそれもあります。一番望ましいのは、本人を諭して、自ら退職願を提出する形にもっていくことです。会社に在籍しつづけても、明るい将来がないことが分かれば、普通は説得に応じるものです。

しかし、ミス多発社員の場合、なかなか自分の立場を理解せず、話が泥沼化するケースも少なくありません。

お尋ねのケースでは、説得が功を奏したわけで、最大の難関はクリアしたことになります。

多くの会社の就業規則では、(少なくとも)14日前の退職願提出を義務化しています。自己都合で辞める場合、今日辞表を提出して、明日退職というのでは、引継ぎ等にも差し障りが出ます。そこで、最長の猶予期間(引止め期間)を14日と定めているわけです。

お尋ねのケースでは、引継ぎ等の必要がないのに、14日経過後を退職日として指定し、かつ、その間の年休消化を申請してきたのですから、お腹立ちはよく分かります。

しかし、本人が自発的に申し出てきた退職予定日を、会社が一方的に変更することはできません。年休は労働者に当然認められた権利ですから、退職日までの間に申請されれば、受理するほかありません。

会社の心証としては、「即日クビにするところを、一等も二等も減じて、自己都合退職扱いにしてやるんだ。年休が欲しいなんて、盗人猛々しい」といったところでしょうか。

しかし、仮に懲戒解雇する場合でも、本人が退職日までの間に年休を申請してくれば、会社はこれを拒否できません。普通は、懲戒解雇といえば、即日解雇ですから、こうした問題は起こりませんが、解雇日までに日数的な余裕があれば、付与する義務が発生します。

ご質問のケースで、本人が退職に応じない場合、「成績不良」に基づく普通解雇という手段も考えられます。しかし、普通解雇なら、30日前の予告が必要で、その間は、やはり年休を与えないといけません。自己都合という形式を取り、期間も14日間なのですから、腹が立っても、法律どおり年休を与えるべきでしょう。

 

 
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