労災隠しの罰則 (2004年2月号より抜粋)  
     
 

「労災隠し」は犯罪といいますが、どんな罰則が課せられるのでしょうか

 

Q

先日、大手ゼネコンが労災隠しを行ったという新聞記事が、大々的に報道されました。労働者の安全に関わる重大な違反だというイメージですが、具体的には、どんな法律に規定があり、どのような罰則が適用されるのでしょうか。

 

 
 

A

50万円以下の罰金に

問題の事件では、元請、下請けの関係4社、計6人が送検されました。いわゆる「労災隠し」と称される犯罪のポイントは、業務上災害が発生したのに、労災保険を使わせず、健康保険等で治療を行わせるというものです。

厚生労働省のパンフレットでも、「労災隠しは犯罪です。仕事中にケガをしたのに、会社から健康保険での治療を指示されたことはありませんか」というキャッチ・コピーを使っています。

健康保険の保障内容は、労災保険に比べると、十分ではありません。医療費の3割は自己負担になりますし、休業補償(傷病手当金)も6割です。

会社は、「費用の差額は負担するから」といって、健康保険を使わせます。ところが、往々にして会社は約束どおりの費用差額負担をしていないため、労働者が労働基準監督署に駆け込み、事件発覚という結果に至ります。しかし、労災保険を使わなかったことそのものが、犯罪となるわけではありません。労災保険の請求をするかしないかは、あくまで労働者の判断にゆだねられています。

それでは、労災隠しで送検される場合、どのような法律が根拠となるのでしょうか。これが、実は労働安全衛生法第100条というちょっと地味な法律です。

要点を抜書きすると、「労働基準監督署長は、この法律を施行するために必要があると認めるときは、事業者に必要な事項を報告させることができる」というものです。

この条文に基づき、死傷病報告(安衛規則第97条)を提出しなかった場合、50万円以下の罰金が課されます(両罰規定で、法人も対象になります)。

労災隠しとは、具体的には、死傷病報告の届出を怠った点が問題とされるわけです。

 

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