時間外協定におけるエスケープ条項 (2004年8月号より抜粋)  
     
 

エスケープ条項の発動回数は残業を命じるごとに1回とカウントするのか?

 

Q

三六(時間外・休日労働)協定のことで、質問があります。今年の4月からルールが変わって、特別条項の発動回数を定めなければいけなくなりました。年6回と定めた場合の回数の数え方ですが、月45時間の限度を超え、その月に3回残業させたら、それだけで発動回数3回になるのでしょうか。

 

 
 

A

月単位の管理で可三六協定で定める時間外の上限は、厚生労働大臣が定める基準(一般企業では、月45時間、年360時間など)以内に収めないといけません。

ただし、特別条項を結べば、その限度で、たとえば月60時間まで働かせることも可能です。

今年の4月から、特別条項に関する規定が厳しくなっています。まず、条項発動の事由について、従来は「業務上やむを得ないとき」のような抽象的な表現も許されましたが、現在は臨時・一時的に残業が必要となる事由を具体的に記す必要があります。

次に、発動回数を定める義務が生じました。1ヵ月単位で特別条項を協定している場合、発動回数は最大6回(1ヵ月×6回=6ヵ月)、3ヵ月単位で協定している場合、最大2回(3ヵ月×2回=6ヵ月)までしか認められません。つまり、特別条項が発動されている期間を、6ヵ月(半年)以内に抑えるのがポイントです。

ところが、この最大6回までという表現に関し、事業主側にちょっとした誤解があるようです。行政側が求めているのは、たとえば原則の上限時間を月45時間と定めている場合、この45時間の限度を超える月を6ヵ月以内にすることです。

特別条項の上限を60時間としていれば、15時間の余裕があります。この15時間は何日に分割しても差し支えありません。5時間ずつに分けて3日残業させたから、特別条項の発動回数が3回になるわけではありません。仮にそうだとすれば、年内に後3回しか、条項を行使できなくなってしまいます。そうではなく、45時間を超え、60時間以内となった月が1回あったとカウントすればよいのです。

さらにいえば、この6回までという回数は、企業単位でも、職場単位でもなく、個人単位で数えます。

ある職場で、仕事が忙しくなり、半年の間に6回(6月)、特別条項を適用したとします。それにより、残りの半年について、会社全体がこの条項を利用できなくなるわけではありません。

同じ職場内でも、たとえば10人のうち9人は限度一杯まで残業させてしまったけれど、1人に限っては4回しか45時間の限度を超えていなかったとします。

たとえば、育児・介護休業の復帰者が2カ月間は休業期間だったため、まるで残業をしていなかったケースなどが考えられます。この場合、その人1人に限っては、年内に後2回、特別条項を適用して、長時間残業に従事してもらうことが可能です。

 

 
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