妊娠中絶と産前産後休暇(2004年8月号より抜粋)  
     
 

妊娠中絶で休んだ場合にすべて年休扱いで問題ないでしょうか?

 

Q

女性従業員が、体調不良で休んでいたと思ったら、母体の安全のため、妊娠中絶を行ったという話です。この場合、すべて年休で処理して構わないのでしょうか。あるいは、産前産後休暇扱いとして、健保の出産手当金の申請をすべきでしょうか。

 

 
 

A

出産日以降は産休で処理

中絶の時期が明らかではありませんが、労基法上、「出産は妊娠4ヵ月以上(1ヵ月は28日として計算、したがって82日以上)の分娩とし、生産のみならず死産をも含む」(昭23・12・23基発1885号)と解されています。

28日×3月=84日ですから、85日目から第4月に入るという理解です。この時期に中絶を行えば、それも労基法上の「出産」とみなされます。

産休は強制義務ですから、会社が年休扱いすることは許されません。ただし、産前は「女性から請求があった場合」のみ付与する義務が発生します。

出産当日は、「産前」に含まれます。それでは、女性が体調不良で休んでいた時期も含め、産前休暇を請求したとします。この場合、どうなるでしょうか。

労基法上は、産前休暇は「自然の分娩予定日上を基準に計算します。中絶の場合、分娩予定日はもっと先だったのでしょうから、それを基準にすれば、中絶日およびその前の期間は、産前6週間(多胎妊娠は14週間)という要件を満たさないのではないでしょう1か。つまり、請求があっても、産前休暇を与える余地はないということです。

出産日の翌日から8週間は、現実の出産日から起算するので、休暇の付与は強制義務(6週間経過後は、医師の認める業務には就労可能)です。

しかし、健保上は、出産以前6週間(多胎妊娠は14週間)、出産後8週間については、「労務に服さなかった期間」について標準報酬日額の6割の出産手当金が出ます。こちらは、産前産後休暇という名前が付されていなくても、名称に関係なく、休んでいた期間が給付対象となります。

 

 
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