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判例 ユニオン・ショップ協定に基づく解雇 (2004年9月号より抜粋) | |
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ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は無効 ユニオン・ショップ条項を結んでいても、現実に解雇に至るのはレア・ケースで、大半の企業はその取扱いをよく知りません。本件は、労組内の不和が原因で有力幹部が除名されたケースで、会社はショップ条項に従って淡々と解雇手続きしました。しかし、除名自体が無効だったため、解雇無効と判断され、解雇期間中の賃金仮払いも命じられるという「踏んだり、蹴ったり」の結果となりました。 T運輸事件 大阪地方裁判所(平15・11・2判決) 中堅以下の企業では、単一の労組が正社員を100%組織化しているのが一般的です。この場合、会社は組合と良好な関係を構築するため、ユニオン・ショップ協定を結びます。 ユニオン・ショップとは、会社が「労働組合に加入しない者、脱退・除名された者は、(原則として)解雇する」等の約束を交わすことです。会社は、労働組合から特定組合員を除名した等の通告を受けたとき、協定に従って解雇する義務を負います。 本事件では、組合と会社が労働条件の一部引き下げ協議中、ある組合員(一時期、副支部長を務めたこともあります)が強行に反対行動を取りました。その確執のなかで、組合は除名処分を決定しました。会社は、「除名の理由を直接に関知せず」、規定に従って解雇処分に付しただけと主張しています。下司(げす)の勘繰りをすれば、「会社と組合が前向きに合意点を見出す努力をしているなかで、不協和音をかもし出す要注意人物」といったレッテル付けをしていたので、ユニオン・ショップを理由に、これ幸いと解雇したという面がなきにしもあらずです。 しかし、それはともかく、「ショップ協定を結んだ以上、会社として否応なしに解雇するほかない」という状況は、往々にして起こり得ます。 判決文では、「除名された労働者に対しユニオン・ショップ協定に基づく義務の履行として使用者が行う解雇は、協定によって使用者に解雇義務が発生している場合に限り是認することができる。除名が無効な場合には、使用者に解雇義務が生じないから、他に解雇の合理性を裏付ける特段の理由がない限り、解雇権の濫用として無効である」と述べました。この論理自体は、素人にも分かり易いものです。 しかし、同時に裁判所は、解雇期間中の賃金仮払い請求についても、一定範囲で保全が認められるとしました。つまり、労組の暴走が原因で、無効な解雇をした場合にも、会社は賃金支払いの責任を負うということです。これは、経営者として、ちょっと承服しかねる結論でしょう。 しかし、この点については、学説でも「ユニオン・ショップ解雇は会社の判断と責任とでなした解雇ではない側面を持つが、使用者は協定締結の際、このようなリスクを引き受けたとみることができる」(菅野和夫「労働法」)と、本判決と同じような立場を取っています。組合と良好な関係を保つには、一定の危険負担もやむを得ないと解されるので、ショップ条項の適用には、いやがうえにも慎重さが求められます。
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