過半数代表者の転出 (2005年2月号より抜粋)  
     
 

三六協定の過半数代表が転出したら協定の効力はどうなるのでしょうか?

 

Q

当社では、三六(時間外・休日労働)協定を結ぶ際、過半数代表者として同じ従業員が多年にわたり、協定の当事者となっていました。しかし、今回、出向を実施し、本人が関連会社に転出してしまいます。この場合、当事者がいなくなることで、協定の効力が失われてしまうのでしょうか。

 

 
 

A

協定を再締結する必要はない

三六協定を結ぶ場合、労働者側の当事者となるのは、「過半数労働組合があるときはその労働組合、ないときは過半数代表者」です。どちらか選択ではなく、過半数労組が存在するときは労組が優先で、過半数代表者と協定を結んでも無効です。

貴社では、過半数労組が存在しないため、過半数代表者と協定を結んでおられるのだと思います。

過半代表者は、「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出される」必要があります(労規則第6条の2)。

貴社では、「同一従業員が多年にわたり、協定の当事者となっていた」ということですが、毎年、協定を結ぶ都度、適切な選出手続きを経た結果として、同一従業員が過半数代表者となっていたのなら、もちろん、問題はありません。

しかし、従業員の意思を問うことなく、慣習的に同一人が協定を結んでいたというなら、法的効力が否定されるおそれがあります。

親睦会の代表者が自動的に協定当事者となっていた事案で、三六協定は無効と判断された裁判例も存在します(トーコロ事件、東京高判平9・11・17)。

過半数代表者が適切に選任されていたとしても、協定期間の途中で、当人の適格性が失われるケースもあり得ます。労働者本人が退職した場合はもちろん、管理職に昇進した場合、お尋ねにあるように他社に出向した場合などが考えられます。

その際、当事者の消滅と同時に、協定の効力も失われてしまうのでしょうか。仮にそうだとすれば、適法にもう一度、三六協定を結び直すまでの間、会社は一切残業を命じられないという結果を伴い、合理的ではありません。

このため、「協定締結当事において労働者の過半数の代表意思が反映されておれば、それだけで法の趣旨は充足され、協定成立後においても継続的に過半数労働者の同意を必要とすると解する必要はない」(労基法コンメンタール)という扱いとなっています。

三六協定(労働協約を除く)を結ぶ場合、有効期間の定めをする必要があります(労規則第16条第2項)。その期間については、「定期的に見直しをする必要があることから、有効期間は1年間とすることが望ましい」(平11・3・31基発第169号)という解釈例規があります。

協定成立当時、適切に過半数代表の意思を反映した三六協定は、当事者が消滅しても有効期間中は効力を失わず、引き続きその範囲内で残業させても法違反ではありません。

 

 
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