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労災で通院している社員の賃金 (2005年6月号より抜粋) | |
業務上でケガをした社員が所定時間中に通院する場合の賃金は? |
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Q |
業務上災害で休んでいた社員が出社を開始しますが、日によって短時間・通院する必要があります。この通院に要する休業時間について、労災保険から給付は出るのでしょうか。給付がない場合、会社として補償する必要がありますか。 |
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A |
時間割でカットしてよい 業務上災害で従業員が休業した場合、待期完成までの最初の3日間については、労基法の規定に従って、会社は平均賃金の6割を支給しなければいけません。しかし、その後は、労災保険から休業補償給付が支給されるので、会社は補償の責を免れます(労基法第84条)。 従業員が一部就労したときの扱いですが、「給付基礎日額から労働に対して支払われる賃金を控除して得た額の100分の60」に相当する休業補償給付が支給されます。このほか、労働福祉事業から休業特別支給金が支払われますが、こちらは省略します。 労災保険の給付基礎日額は、原則として「労基法の平均賃金に相当する額」(労災保険法第8条)と定められています。私傷病による休業期間等について、労災保険では特例を設けていますが、基本的には平均賃金と同額と考えてよいでしょう。 平均賃金は、過去3ヵ月間の賃金総額を総暦日数(つまり、公休日等も含む)で割って算出します。このため、出勤日1日当たりの賃金と比べると、通常は平均賃金の方が低額になります。 月給30万円の人の場合、平均賃金は約1万円になります。1ヵ月の出勤日が23日とすれば、1日当たりの賃金は、約1万3,000円となり、3,000円の差額が出ます。 業務上災害でケガをした人が、朝、1時間だけ病院で治療を受けた後で、出社したとします。1時間分の賃金を差し引くとその日の賃金は1万1,375円になり、平均賃金より高くなります。 この場合、「給付基礎日額(平均賃金)から労働に対して支払われる賃金を控除して得た額」はマイナスになるので、休業補償給付は支給されません。 一方、午前中4時間休んで、午後から出社したとします。所定労働時間を8時間とすると、働いたのは4時間だけですから、払われる賃金は6,500円となります。このときは、平均賃金との差額3,500円の60%が休業補償給付として支給されます。 休業する時間が短いと、休業補償給付そのものが由ないケースもあり得ます。休業時間が長ければ、賃金に追加して休業補償給付が支給されますが、賃金と給付を合計した額が給付基礎日額(平均賃金)を超えることはありません。 つまり、通院等で不就労時間が発生すれば、労災保険による給付がある場合でも、100%の賃金は補償されないという結論になります。 しかし、だからといって、会社が不足分を補償する義務はなく、通院時間に対応する賃金をカットしても、法律上、問題は生じません。
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