宿日直手当 (2005年10月号より抜粋)  
     
 

宿直業務に就いた人には10割の賃金に上乗せして手当てを払うのか?

 

Q

当社では、宿直者に対し、平均賃金の3分の1の宿直手当を支払っています。ところが、従業員の1人が「この手当は割増賃金に代わるもので、基本となる100%の賃金は別に払う必要があるのではないか」といい出して、困っています。定額の手当を支払うだけでは、ダメなのでしょうか。

 

 
 

A

宿日直手当(3分の1の賃金に相当)だけでよい。

従業員を宿日直に就かせる場合、所轄労働基準監督署の許可を受ければ、時間外労働扱いする必要がありません(労規則第23条)。許可基準は、通達(昭22・9・13発基第17号、昭63・3・14基発第150号)で示されています。

手当に関しては、「宿日直に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(割増賃金の基礎となる賃金に限る)の1人1日平均額の3分の1を下らない」ことが条件となっています。労基法第12条の「平均賃金」ではなく、「1人1日平均額」となっている点には、注意が必要です

解説書(たとえば、労基法コンメンタール)をみると、「宿日直勤務に対しては通常の労働に対する賃金とは別に相当の手当が支給されるべきことを要件としている」と書かれています。

これを読むと、通常の賃金(100%分)を払ったうえで、さらに割増賃金と同じように上乗せで手当を支給する義務があるという誤解が生じかねません。しかし、ここでいう「通常の労働に対する賃金」とは、宿日直勤務以外の労働に対する賃金を指します。

「労規則第23条は、本来の業務とは別に宿日直勤務をする者に適用される」という趣旨の行政解釈(昭和35・8・25基収第6438号)が存在します。本来業務とは別に宿日直勤務に就くので、「通常の賃金とは別に相当の手当が必要」という結論になるのです。

別の行政解釈(昭23・3・16基発第456号)でも、「日直勤務者に対して通牒(前掲示行政解釈)による手当額を支給する場合はそのものに支払われるべきその日の賃金は支払う必要がないものと解される」と述べています。

宿日直は、「常態として、ほとんど労働する必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えて待機する等を目的とする者に限って許可」されます。たとえ公休日・深夜の出勤を義務付けるとしても、働く必要がないのですから、手当の支払いのみで事足りるのです。

ちなみに、宿日直勤務に関しては、労働時間・休日に関する規制は及びませんが、深夜業の規定だけは適用があります。つまり、25%の割増の支払い義務があるということです。

この点については、「宿直手当(深夜割増賃金を含む)1回について1人1日平均額の3分の1(以上)」であれば、法律の要件を満たすという扱いになっています。宿直手当は、あらかじめ深夜割増込みで定めるものなのです。

 
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