出向で会社が利益を得たら違法? (2006年2月号より抜粋)  
     
 

出向先から受ける費用補填が本人の給与より高いと問題があるか?

 

Q

他社の要請で、技術指導者を出向に出します。賃金は当社(出向元)が直接支払い、相手方会社(出向先)から費用をペイバックしてもらいます。ところが、相手方会社の提示する賃金額(出高費用の精算額)が、当社従業員の賃金よりかなり高額です。差額を当社が収益として計上するのは、法律違反でしょうか。

 

 
 
 

利益が大きいと職業安定法違反の可能性

現在のところ、出向について、明確な法的規定は存在しません。しかし、労働者を提供する会社と受け入れる会社、それに労働者という三角関係が発生するという意味で、外見的には、派遣や労働者供給と似通った点もみられます。

派遣の定義は、「自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令下で労働に従事させること」(派遣法第2条1号)ですが、「他人に雇用させることを約してするものを含まない」というただし書きが付いています。在籍出向は、出向元と労働者の間だけでなく、出向先(他人)と労働者の間にも雇用契約が存在するので、派遣には該当しません。

労働者供給は、「契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる」(職業安定法第4条第6項)ことをいい、「派遣労働を除く」というただし書きが何いています。このため、「在籍型出向は、その形態は、労働者供給に該当する」(労働者派遣事業関係業務取扱要領)と解されています。労働者供給事業を「業として行う」ことは、職業安定法第44条で禁止されています。

一般に出向が職業安定法違反とならないのは、

  1. 雇用機会の確保
  2. 経営・技術指導
  3. 職業能力開発
  4. 企業グループ内人事異動

等を目的として実施するものであり、社会通念上「業として行われていると判断されない」からです。

高額の差額を収益として計上すれば、この条件から逸脱してしまいます。また、「出向という名称が用いられたとしても、実質的に労働者派遣とみなされる」(前掲要領)ケースもあるので、注意が必要です。

 
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