変形労働時間制の時間外労働 (2006年3月号より抜粋)  
     
 

1ヵ月の総労働時間が法定枠内でも割増が必要になるのはなぜ?

 

Q

当社では、1ヵ月単位変形労働時間制を採っています。各月の所定労働時間は、祝日の多い月など法定労働時間の総枠を大幅に下回っています。実労働時間が法定枠を超えた場合には割増賃金を支払っていますが、この計算方法では法違反が生じるおそれがあると指摘を受けてしまいました。なぜなのでしょうか。

 

 
 
 

日・週単位でも確認必要

1ヵ月単位変形労働時間制では、法定労働時間を次の計算式に従って算出します。

 

40時間×月の暦日数÷7日

ですから、月の暦日数に応じて、次の3通りとなります。

  • 31日=177.14 時間
  • 30日=171.42 時間
  • 28日=160.00 時間

法律的にいえば、所定労働時間をこの総枠一杯に設定し、残業がゼロなら割増賃金の支払いを要しません。貴社の場合、所定労働時間の総枠は、法定の総枠より少なく設定されています。残業が法定の枠内に収まる場合には、「法内残業」として、割増を支私わなくても適法なはずです。

それでは、何が問題なのでしょうか。1カ月単位変形労働制で時間外労働となるのは、次の3通りの場合です。

  1. 1日8時間を超えて所定労働時間を定めている場合は、その所定労働時間を超える部分の時間、それ以外の日は8時間を超える部分の時間
  2. 1週間40時間を超えて所定労働時間を定めている場合は、その所定労働時間を超える部分の時間、それ以外の週は40時間を超える部分の時間(1.で時間外労働となる時間を除く)
  3. 各月については、法定の労働時間総枠を超える時間(1、2で時間外労働となる時間を除く)

3.の要件さえ満たせば、済むわけではなく、1、2の要件に該当するか否か、チェックする必要があります。

たとえば、暦日数が31日で、所定労働日数が20日というケースで考えてみましょう。1日の所定労働時間が8時間固定という場合、月の所定労働時間は160時間となります。祝日が挟まって、4日勤務の週があったとして、その祝日に休日出勤させ、8時間働かせたとします。1日の労働時間は8時間、その週の労働時間も40時間(所定32時間プラス8時間)、月の労働時間も168時間(所定160時間プラス8時間)ですから、前期1、2、3のいずれにも該当せず、割増は必要ありません。

しかし、同じ週の通常の労働日に1時間残業させたら、どうでしょうか。その週の労働間は33時間(所定32時間プラス1時間)、月の労働時間も161時間(所定160時間プラス1時間)でセーフですが、1日については9時間(所定8時間プラス1時間)労働になりますから、1時間分の割増が必要という結論になります。

月の総労働時間が法定枠内に収まっていても、1日・1週間単位でみれば、「法内残業」にならないケースもあるので、注意が必要です。

 
就業規則の改正をして変形労働時間制の導入することにより、割増賃金節減が可能となる場合があります。



 
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