特別措置対象事業場(2019年2月号より抜粋)
特例措置対象事業場労働保険の一括手続きを取ると小規模店舗も週40時間の対象になるか
Q 当社は小売業で、小規模店舗をいくつか抱えています。1店舗の人数は10人未満なので、労働時間の特例(週44時間)を適用しています。しかし、労働保険は、少し以前から一括の手続きを採っています。この場合、各店舗は独立した事業場として認められず、44時間の特例は適用されないのでしょうか。
A労墓法上の扱い変わらず
複雑な話なので、一般の担当者にも理解できるように、前提条件から確認していきましょう。
週の法定労働時間は労基法第32条で定められていますが、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業では、規模lO人未満の事業場に限って、特例が認められています。1週44時間、1日8時間の枠内で所定労働時間の設定が可能です(労基則第25条の2)。
規模10人未満であるか否かは、事業(事業場)単位で判断します。解釈例規では、「一の事業であるか否かは主として場所的観念によって決定すべきもので、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする」と述べています(平11・3・31基発第168号等)。貴社は小売業(商業)なので、企業全体で
50人、lOO人の規模であっても、個々の店舗が10人未満であれば、特例の適用を受けます(週44時間制でもOK)。
しかし、事業場の判断基準には例外があります。「出張所、支所等で規模が小さく、一の事業という程度の独立性のないものは、直近上位の機構と一括して取り扱う」とされています。
貴社では、少し以前に労働保険の一括の手続きを採られたということです。
労働保険の適用も、基本的には事業(事業場)単位となります。しかし、継続事業については、「事業主が同一人である2以上の事業で、事業の種類が同じ等の一定要作(徴収則第10条に要件を規定)を満たす場合」、事業主の申請により保険関係を一括することができます(徴収法第9条)。
一括の手続きを採ると、「2以上の事業に使用される労働者はすべて一括後の事業に使用される労働者とみなされ」ます。これだけを読むと、保険関係の一括を行った後は、それぞれの事業は独立性を失ってしまい、「直近上位の機構に一括」されるようにも思えます。そうなると、44時間の適用対象から外れてしまうのではないか、という疑問が生じます。
しかし、徴収法第9条の一括の効果は、「この法律(徴収法)の規定の適用」に関する範囲に限られます。たとえば、雇用保険の保険給付等に関しては、引き続きそれぞれの事業を管轄するハローワークで手続きする必要があります。
ですから、各店舗が労基法上の独立の事業場という性格を保っていれば、引き続き労働時間の特例も適用されます。
なお、働き方改革関連法に関する建議の中では、「将来的に特例措置対象事業場の範囲縮小を検討する」と述べているので、今後の改正動向にも注意が必要です。