ADR(裁判外紛争解決)制度の詳細
ADRとは、裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)のことで、訴訟によらない紛争解決方法をいいます。都道府県労働局の紛争調整委員会等を舞台にした、行政型ADRと、厚生労働大臣が指定する団体(各都道府県の社会保険労務士会など)を舞台にした民間型ADRがあります。
■行政型ADR(紛争調整委員会によるあっせん等)
(1)紛争調整委員会とは
弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されています。この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施します。
(2)場所(東京労働局)
〒102-8305〜7 東京都千代田区九段南1−2−1九段第3合同庁舎(当事務所の所在地が東京のため、ここを利用しています)
地図
(3)解決できる紛争
労働問題に関するあらゆる分野の紛争(募集・採用に関するものを除く)がその対象となります。(以下その例)
(4)紛争調整委員会によるあっせんの特徴
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あっせんを受けるのに費用はかかりません(弁護士や特定社会保険労務士に代理を依頼した時の費用は除く)
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紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力をもつことになります
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あっせんの手続きは非公開です
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労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています
(5)紛争調整委員会によるあっせん手続きの流れ
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あっせん申請書の作成(特定社会保険労務士に依頼するのが望ましい)
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都道府県労働局総務部企画室または最寄の労働相談コーナーで「あっせん申請書」の提出
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都道府県労働局長が、紛争調整委員会にあっせんを委任
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紛争調整委員会の会長が指名したあっせん委員があっせん期日(あっせんが行なわれる日)を通知する
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あっせん期日にあっせんの実施
あっせん委員が行なうこと
紛争当事者者双方があっせん案を受諾した場合や、その他の合意が成立した場合は、紛争は円満に解決します。
(6)和解に至らなかった場合は?
以下のときになどには、あっせん手続は終了し、裁判等の別の紛争解決手続きに移行します。
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相手方が、あっせんに応ずる意思がないとき
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当事者の一方が正当な理由なくあっせん期日に欠席し、又は当事者の一方が和解する意思がないことを明確にするなど、あっせん委員が和解の成立の見込みがないと認めたとき
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.申立人が、書面又は口頭で取り下げを求めたとき
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相手方が、書面又は口頭で手続き終了を求めたとき
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当事者の一方が死亡したとき
■民間型ADR(社労士会労働紛争解決センター等)
(1)社労士会労働紛争解決センターとは
「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」に基づく法務大臣の認証と、社会保険労務士法に基づく厚生労働大臣の指定を受けて、労務管理の専門家である社会保険労務士が、トラブルの当事者の言い分を聴くなどしながら、その知見を活かし、発生してしまった個別労働関係紛争を、「あっせん」の手続により、簡易、迅速、低廉に円満解決する機関です。
(2)場所(社労士会労働紛争解決センター東京)
〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台4-6
御茶ノ水ソラシティ アカデミア4階
東京都社会保険労務士会館内
TEL:03-5289-0751 FAX:03-5289-8820
(当事務所の所在地が東京のため、ここを利用しています)
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(3)解決できる紛争
行政型ADRと同じです。
(4)社労士会労働紛争解決センターによるあっせんの特徴
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あっせんの申し立て費用として、社労士会労働紛争解決センター東京では申し立て1件あたり3,240円(消費税含む。)が必要です。(平成30年5月31日まで減免措置により無料)都道府県の社会保険労務士会の社労士会労働紛争解決センターは、センターごとに費用が若干異なることがあります。
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紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力をもつことになります
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あっせんの手続きは非公開です
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労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることの禁止条項は法律上ありません
(5)社労士会労働紛争解決センターにおけるあっせん手続の流
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社労士会労働紛争解決センターにあっせんの依頼
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センター事務局から申立人または代理人への説明
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代理人(特定社会保険労務士の選任)
当研究所の特定社労士にご依頼いただければ幸いです。
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受付窓口で本人または代理人による申し立て
準備する書類等
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受理される
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被申立人またはその代理人への説明
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被申立人の代理人(特定社会保険労務士)の選任
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被申立人から依頼(被申立人があっせんを断れば、手続はここで終了します)
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当事者双方に、第一回期日やあっせん委員氏名の通知
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あっせんを行なう
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あっせんの結果
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申立人の申立取り下げ
→あっせんは打ち切られます。
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被申立人の手続終了の求め
→あっせんは打ち切られます。
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和解成立
→和解契約書を作成。和解が成立します。
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所長による手続終了の決定
→和解が不可能と所長が判断した場合、あっせん手続は打ち切られます。
(6)和解に至らなかった場合は?
以下のときになどには、あっせん手続は終了し、裁判等の別の紛争解決手続きに移行します。
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.相手方が、申し立てに応ずる意思がないとき
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当事者の一方が正当な理由なくあっせん期日に欠席し、又は当事者の一方が和解する意思がないことを明確にするなど、あっせん委員が和解の成立の見込みがないと認めたとき
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申立人が、書面又は口頭で取り下げを求めたとき
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相手方が、書面又は口頭で手続き終了を求めたとき
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当事者の一方が死亡したとき
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