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育児休業の変更 (2003年7月号より抜粋) | |
育休の終了時期を繰上げたいと申し出あれば応じる義務がありますか? |
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Q |
1年の予定で育児休業を取っていた女性社員から、家庭の事情で早めに職場復帰したいと申し出がありました。当社の育児休業規定では、終了日の繰下げ規定があるだけで、繰上げには触れていません。どのように対応すべきでしょうか。 |
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A |
育児休業法第8条に「育児休業開始予定日の変更の申し出等」という規定があり、その第3項で「育児休業予定日を1回に限り終了予定日後の日に変更できる」と定めています。 しかし、繰上げについては、一言も触れていません。貴社の育児休業規定に繰上げの条文がないのは、法律の規定に従ったまでのことだと思います。この点に関しては、「労働者の申し出のみによる育児休業終了予定日の繰上げ変更については、規定していないものであること」(平7・9・29婦発第277号)という解釈例規があります。定めがないのは、申し出に応じて繰り上げる義務はないという意味です。 育児休業取得者が出たとき、会社として職務配分の変更や代替者の確保など、何らかの措置を講じる必要があります。派遣法第40条の2では、育児休業取得者の代替派遣に関する特例を設け、「産前産後の期間と合わせ、2年まで」の派遣受入れを認めています。 会社が派遣契約を結んだ後、育児休業者から急に職場復帰したいと申し出があったら、対応に窮します。「派遣先が講ずべき指針」では、派遣契約を途中解除する場合、「30日前の予告、または30日分の賃金の支払」が必要としています。そうした事情もあって、繰上げを認める義務を免除したものと解されます。 しかし、人員配置の余裕がない会社では、職務の掛け持ちなどで、対処しているケースもあります。その場合、育児休業者の復帰は、むしろ会社にとって、望ましいことです。このため、前掲解釈例規では、「労働者の希望により育児休業終了予定日を繰上げ変更することを認める制度を設けることは可能であること」と、わざわざただし書きを付しています。 厚生労働省のモデル育児休業規定でも、「従業員が育児休業終了予定日の繰上げ変更を希望する場合には、育児休業期間変更申出書により人事部労務課に申し出るものとし、会社がこれを適当と認めた場合には、原則として繰り上げた休業終了予定日の1週間前までに、本人に通知する」という規定を推奨しています。これは育児・介護休業法を上回る規定ですから、もちろん有効です。 会社として、無制限に繰上げを認めるわけではないので、負担は小さく、融通の利く定め方だと思います。 貴社の場合、繰上げに関し何の規定もなく、認める義務はないわけですが、人員配置上、障害がなければ、職場復帰させても何の問題もありません。 こうした例外ケースも想定して、育児休業規定を、前記モデルを参考に改定しておけば、さらによいでしょう。(東京労務管理総合研究所作成の育児休業規程は、休業の繰り上げ・繰り下げに対応したものになっております。)
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