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判例 育児休業者のボーナス (2004年3月号より抜粋) | |
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ノーワーク・ノーペイで処理を 育児休業の取得者に対し、ボーナスを払わないのは違法だという認識は、かなり社会的に浸透しているようです。本件は、その契機となった有名事案です。第一審、第二審では、ボーナスの全額支給を命じましたが、会社は日数分のカットは可能なはずと主張しました。最高裁は、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、日割処理は適法という判断を示しました。 最高裁判所(平15・12・4判決) 会社は、給与規定で「賞与支給対象者を出勤率90%以上の者」と定めていました。女性従業員が育児休業(引き続き、育児短時間勤務)を取得したのに合わせ、出勤率の計算では育休等も欠勤扱いすることを明確にし、それに基づき、女性従業員にはボーナスをまったく支給しませんでした。 ボーナスは、賃金と違って、必ず支給する義務が存在するわけではありません。本来的にいえば、算定対象期間中、よく働いた人を対象に、「これからも頑張ってください」と支払うものです。ですから、支給日在籍要件(支給日に在籍しない人には、ボーナスを払わないという規定)も、原則的には有効と解されています。 そういう意味では、育児休業を取って算定対象期間の半分も休んだ人間には、「ボーナスは払わない」という会社の姿勢も分からないではありません。 しかし、この問題では、第一審から裁判所は、そうした取扱いは許されないという態度を取り続けてきました。本件の最高裁判断も、もちろんその流れに沿うものです。 なぜ、不支給が許されないのでしょうか。判決文では、その理由と条件を次のように述べています。「労働基準法および育児休業法の趣旨に照らすと、(育休を欠勤扱いし、賞与を払わないという措置は)これら権利の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が権利等を保障した趣旨を実質的に失わせると認められる場合には、公序に反するとして無効となると解する」。 つまり、法で保障された権利を阻害するような定めは、労使間の私的な取り決めであっても、許されないという結論です。ただし、第一審、第二審では、この論理に基づき、ボーナスの全額支払を命じていました。これは、ノーワーク・ノーペイの原則からみれば、少しおかしな話で、学者等の批判もありました。 最高裁は、この点に関しては、「産休や育児のための時間短縮分は欠勤として減額の対象とされることになるが、90%条項と異なり、その欠勤日数に応じて減額するにとどまるので、これをもって直ちに公序に反し無効なものということはできない」と述べ、日割処理を認めました。 厚生労働省は、「職業生活と家庭生活との両立指針」のなかで、「休業した期間分は日割りで算定対象期間から控除すること等働かなかったものとして取り扱うことは、不利益取扱いには該当しない」という考え方を示していました。今回の最高裁判決は、この指針とも合致する内容で、実務的にも話がスッキリと整理されました。
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