教育的人事制度の構築
■人事考課制度(評価制度)とその問題点
能力主義や成果主義賃金制度とは「能力」や「成果(会社の業績への貢献度)に応じた賃金を支払う」ものです。
そのためには、個々の従業員の能力や会社への貢献度(成果)を人事考課制度によって数値化する必要があります。
しかし、従来の人事考課制度にはいろいろな問題がありました。公正な評価ができていなかったり、人事考課結果にマッチした処遇がなされていなかったりしたのです。
従来の人事考課制度の問題点(ほんの一例)
- 評価の目的が賞与などの成績査定のみである。(賞与査定が下がることをチラつかせて、従業員のシリを叩く手法)
- 評価結果が次期の仕事に生かされていない。
- 評価基準や評価の方法が従業員に非公開で、従業員が評価結果に納得していない。
- 評価者の主観によって評価が決定するなど、評価エラーが頻発して信用できない。
- 評価者(経営者)に自信がなく、評価によって給与の大きな較差が出るのを恐れ、結果としてメリハリのない評価になってしまった。
- 誤った評価を出すことによって、かえって従業員の士気が低下してしまった。
1990年代後半から鳴り物入りで登場し、急速に拡大した成果主義。ところが、社員の士気と会社の業績を向上させるはずの成果主義を上手く運用できない企業が大変多かったのでした。※
社員のやる気低下と企業の業績悪化まねいた成果主義の失敗は人事制度の失敗であると当研究所は考えます。
※厚生労働省の平成13年就労条件総合調査によると、成果主義導入により「問題がある」と答えた企業が72.8%にも及びました。
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■人事考課制度の課題
従業員の士気を高め、従業員個々の能力の向上と会社の発展を期すには、評価制度が「単なる給与・賞与などの成績査定のみ」であってはいけません。
-
今期の評価を来期への動機付けにできる制度
-
従業員の能力を伸ばす教育的な制度
-
結果として会社全体の業績をアップさせる制度
が求められます。具体的にはコンピテンシーを利用した人事制度の構築です。
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■コンピテンシーを利用した教育的人事制度
【 コンピテンシーとは? 】
コンピテンシー(competency)とはアメリカから入ってきた概念で、「高い業績をあげるための行動特性」という意味です。
例えば高い営業成績を長年にわたってあげている社員は、一般的な社員と何か違う行動をとっているはずです。営業の時、もしくはその準備段階やアフターフォローにおいて。その売上に結びつく行動を徹底調査して他の社員の成績や会社全体の業績向上に生かそうというのがコンピテンシーの考え方です。
コンピテンシーを、採用・評価・教育に一貫して利用することによって企業の業績の向上が期待できます。(下図)
- 高い業績をあげるような行動をする人間を採用
→当然に会社の業績も向上
- 高い業績をあげるような行動をする社員を高く評価
→他の社員もその行動をまねて高い評価を得ようとする
→コンピテンシーレベルの高い社員の増加
→会社の業績も向上
- コンピテンシーレベルを上げる教育
→レベルの高い社員の増加
→会社の業績も向上
【
コンピテンシー評価と職務遂行能力の違い 】
コンピテンシーは「表にあらわれる行動」ですので、それを評価した場合、従来の能力評価とは下記のような違いがでてきます。
コンピテンシーを評価 |
職務遂行能力を評価 |
表にあらわれる行動を評価 |
潜在的な能力も含めて評価 |
- 公平、公正な評価が可能
- 誰が評価しても同じ結果
- 社員が評価に納得
- 評価と教育の結びつき(具体的行動であるため、まねしやすい、教育しやすい)
- 給与に差をつけやすい
- 社員の和を重視した社内政策とも違和感なくなじむ
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- 潜在的な能力は公平、公正に評価することが難しい
- 評価者訓練が必須
- 評価者によって評価のばらつき
- 社員が評価に不信感をいだく場合が
- 給与に差がつけにくい
|
コンピテンシー評価導入により、従来の人事考課制度の問題点で挙げた事項はすべて解決することがわかると思います。
【 行動特性のあぶりだし 】
コンピテンシーを利用した人事制度を構築するためには、「高い業績をあげる行動特性」をあぶりだす必要があります。方法は以下のようなものが考えられます。
- まったくの白紙から作る
徹底した社内調査(高成績社員へのインタビューを含む)を行う。時間と費用がかかりますが、御社オリジナルのものが作れます。
- モデルを利用する
研究者などが作ったモデルやコンピテンシーディクショナリー(ディクショナリー
=
辞典)をもとに作る。この場合、ライセンス使用料がかかる場合がありますのでご注意ください。
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